藤布とは、野山に自生する藤の花の蔓で糸を紡ぎ、この糸で織り上げた布のことである。約1300年ほど前より、生活を支えるために藤布を織り、今日までその技術を伝えてきた。万葉集には「藤波の花は盛になりにけり 平城の京を思ほすや君」等、藤を用いた多くの和歌や俳句が詠まれており、藤布が使われたことを詠んだ「大君の潮焼く海人の藤衣」もある。また、元弘2(1332)年、幕府によって隠岐の島に流された後醍醐天皇が藤の苗木を隠岐の島に持参された逸 話もあり、藤を愛された天皇が藤布をまとい、都に思いを馳せられたとも語られている。
 日本最古の織物の一つである藤布は、京都府の与謝野町で今もその技術を伝えている。
 手仕事でしか作ることのできない藤布も昭和58(1983)年には「丹後藤織り」が国の無形文化財記録保存となり、現在、京都府の無形民俗文化財に指定されている。平成13(2001)年3月には京都府知事指定 京もの指定工芸品「丹後藤布」となる。

丹後藤布